「今まで英語が得意だったのに、高校に入った途端、急に分からなくなった」
これは、多くの高校生が直面する壁です。
しかし、この「突然の不調」は、決して能力が落ちたわけではありません。
単に、中学時代から間違った英語の勉強法を続けてきたことが、より難しくなった高校英語で露呈したにすぎません。
つまり、中学時代に「できていた」という感覚は、残念ながら「誤解」や「錯覚」だった可能性が高いんです。
目次
文の構造を把握することが重要
多くの中学生が「英語はできる」と勘違いしてしまう最大の原因は、中学で習う英文が比較的シンプルで、単語も簡単なものが多い点にあります。
「文の仕組みを無視して、知っている単語の意味だけで乗り切る」という方法でテストで結果を出せてしまうため
「単語の暗記とテスト前の文法暗記で十分だ」と誤解し、「文の構造などわからなくても英語はできる」と思い込んでしまうのです。
英語は、日本語と違って「語順」が意味を決定づける言語です。
例えば、
The dog chased the cat. (犬が猫を追いかけた。)
The cat chased the dog. (猫が犬を追いかけた。)
のように、主語(S)と目的語(O)の位置が入れ替わるだけで、意味は完全に逆転します。
また、語順は文法的な成立に極めて重要で、
I eat apples.
を
I apples eat.
のように崩せば、文として成立しません。
しかし、中学の易しい英文であれば、「私」「リンゴ」「食べる」といった知っている単語を、都合よく頭の中で組み合わせてしまえば、文の構造が間違っていても、だいたいの意味を推測できてしまうのです。
しかし、難易度が上がるにつれて、この「単なる暗記や推測」に頼る学習法では必ず壁にぶつかります。
真の英語力とは、単語や表現といったパーツをただ覚えることではありません。
英語学習は、知識を一つひとつ着実に積み重ね、まず「文の構造(品詞・文型)」を正しく理解することで、初めて様々な文章に応用が利くようになります。
難易度が上がるほど、この「仕組みを理解し、使いこなす力」こそが求められるのです。
難易度が上がると「実力不足」がバレてしまう理由
この「単語の暗記と推測」だけで乗り切る学習法が通用しなくなるのは、英文が複雑になり、単語の意味のイメージだけではどうにもならなくなる時です。
1. 中学3年生後半での「複雑な文章の登場」
関係代名詞や分詞といった、一つの文の中に別の文の情報が組み込まれる表現が出てくると、文章は急に複雑になります。
例: The boy who is playing soccer over there is my brother.
これは一例ですが、定期テストであれば、それが関係代名詞・分詞だと明示されたうえで問題が出されるので、正解を出すことは難しくないのですが、模試になるとそうもいきません。
仕組みを理解していない学生は、「あそこでサッカーをしている」という長い修飾部分が、文の骨格である「少年(主語)」と「〜です(動詞)」の繋がりを見えにくくしていることに気づけません。
単語の羅列を追うだけでは、文章の「骨格」を見失い、正確な意味を捉えられなくなります。
もちろん、上の例文はそこまで構造が複雑ではないので、「訳しなさい」と言われたら文の構造を理解できていなくても正解をだせてしまいます。
しかし、並べ替え問題になるとできなくなってしまう子が多くいます。
2. 高校進学後の「長い文章と難しい語彙の増加」
高校英語では、構造が非常に難しくなります。
主語と動詞の間に、何行にもわたる説明が挟み込まれる文章が増えます。
このレベルになると、単に「知っている単語を拾い集める」という作業で意味を推測するのは完全に不可能です。
文の骨格(主語はどこか、動詞はどこか)を正確に見抜く「構造分析力」が必要不可欠になります。
また「リンゴ」や「食べる」といった具体的な単語だけでなく、「abstract(抽象的な)」や「implication(裏の意味)」といった、文脈全体を理解しなければ意味が取りにくい抽象度の高い単語が増えます。
単語単体の暗記だけでは対応不可能になります。
まとめ
「英語ができなくなった」と感じる高校生は、その多くが基礎的な文の仕組み(品詞・文型)の理解が不十分なまま、中学レベルの簡単な文章で「できていた」と誤解していただけなのです。
「急にできなくなった」のではなく、それまで隠されていた「実力不足」が、難易度の上昇によってついに露呈した結果と言えます。
英語の語順の重要性を最初から意識し、構造を理解する学習をしていなければ、「急にできなくなる」という問題は避けられないのです。