「文章を読めない」という事態は、単なる学力低下に留まらず、子どもたちの未来に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

国語に苦手意識を持っている子は、できるだけ早い段階で、文章を丁寧に読む習慣を身につけることをお勧めします。

語彙力・読解力不足だけが原因ではない?

子どもたちにとって負担が大きいと思いますが、以下の状況を危惧して「要約・意味調べノート」を実施しています。

 

スマートフォンやタブレットなどの視覚的なコンテンツに触れる機会が増え、紙媒体の本を読む機会が減少傾向にあります。

この状況が、子どもたちの語彙力と読解力の低下に繋がっていると私は考えています。

語彙力や読解力が不足すると、文章をまとまりとして捉えることが難しくなり、単語や文節をスムーズに読むことができません。

知らない言葉や表現が出てきた際に、前後の文脈から推測したり、知っている言葉に置き換えたりすることで、正確な読解が妨げられる可能性があります。

それ以上に私が危惧しているのは、スマートフォンやタブレットで文章を読む際にスクロールによる流し読みです。

スクロールをして眺めるだけで文章を読んだ気になるだけでなく、文字を丁寧に読むことが面倒になり、「飛ばし読み」や「勝手読み」につながる可能性があります。

これらの問題を解決するためには、語彙力を強化し、内容をしっかりと捉えるために文章を丁寧に読む訓練が不可欠です。

飛ばし読み

国語の問題を解く際の「飛ばし読み」は、重要な部分に絞って読むテクニックとして知られています。

しかし、小中学生の場合、文章を読むことに慣れていないため、集中力が続かず、意図せず内容を読み飛ばしてしまうことがあります。

これは、テクニックとしての「飛ばし読み」とは異なるものです。

 

次の文章(『読書力』齋藤孝、岩波書店、2002)を基に、子どもたちがどのような飛ばし読みをしているかの一例を挙げておきます。

はっきりと言えるのは、会話に脈絡があるかどうかという違いだ。中学生や高校生の友だち同士の会話を聞いていると、まったく脈絡のない話を次々にしていることがよくある。それはそれで友だち同士なので楽しい会話になっているのかもしれない。問題は、親しい友人以外と話す場合だ。脈絡のない話し方は通用しない。相手の言ったこととまったく無関係に「ていうか」という始まりで、まったく別の自分だけに関心のある話をしたならば、相手はうんざりしてきて人格さえも疑うようになる。脈絡のない話し方は、社会性がないと受け取られる。

わからない言葉があると、その言葉の意味を考えずに文字を追うだけでそのまま読み進めてしまう子がいます。

たとえば、「脈絡」という言葉がわからなくても、前後の文章から意味を推測せずに、その言葉がないものとして無視して読んでしまうのです。

普段からこのような読み方をしていると、わからない言葉が出てきたときに、その都度立ち止まって考える習慣が身につきませんし、書かれてある内容をつかめるようにはなりません。

 

次のような「飛ばし読み」もあります。

飛ばし読みをする子がどのような読み方をしているかの例

このように一文を丸々飛ばしてしまう子もいます。

文が明らかに繋がっていなくても読み進められるのは、文章の意味をきちんと捉えずに読んでいる証拠です。

このような読み方をしているようでは、国語の問題をどれだけ解いても、問題を解けるようにはなりません。

 

レイズで行っている「要約・意味調べノート」をすることで、ゆっくりと内容を理解しながら読む訓練をすることで、この状況を少しずつ改善していきましょう。

勝手読み

「勝手読み」の要因としては、語彙力や読解力の不足、視覚認知やワーキングメモリの弱さなど、様々なものが考えられ、昔から見られる現象でした。

しかし、塾講師として20年以上子どもたちに勉強を教えてきた経験から、少なくとも2000年代と比べて2020年代は明らかに「勝手読み」をする子どもが増えているように感じます。

読めない子どもが増えた原因は、スマートフォンなどのデジタルデバイスの利用による集中力・注意力の低下によるものだと私は推測しています。

 

この状況を改善するのに役立つのは繰り返しになりますが「要約・意味調べノート」です。

10代前半のうちに、文章を丁寧に読む習慣を身につけさせておくことは、子どもの将来にとって有益になるはずです。

 

以下、勝手読みの例を挙げておきます。

最近は次のような勝手読みをする子が目立つようになっています。

勝手読みをする子の具体例

上で引用した『読解力』から「しい友人以外と話す」「相手の言ったこととまったく無関係に」という文を抜粋しました。

文章を適当に読む癖のある子は、「しい友達と話す」「相手の言ったのと無関係に」のように読んでしまう可能性が十分考えられます。

 

 

1日10分程度の音読だけでも、勝手読みを減らすのに効果的な訓練となるはずです(音読は聞いてあげてください)。

塾に通われない場合は、ぜひ音読だけでも習慣にすることをおすすめします。

音読

読書のススメ

子供たちが国語の文章題を解く際、答えを出すことにどうしても意識が集中してしまい、文章そのものをじっくりと味わう余裕がないように感じられます。

文章を読むということは、単なるテスト勉強のためだけではなく、「筆者の考えを深く理解したり」「物語の世界に浸ったりする」ことで、豊かな知的体験を得られる手段でもあります。

そこで、レイズでは「国語の勉強」としてだけでなく、「趣味の一つ」として読書を強く勧めています。

読書をしたからといって、すぐに国語の点数が上がるわけではありませんが、様々な文章に触れることで、「知識」や「教養」が深まるのはもちろん、「想像力」や「考える力」が育ち、心が豊かになることは間違いありません。

読書を通じて自分の世界を広げる